Unreal Engine 5ではじめる! 3DCGゲームワールド制作入門
Unreal Engine 5(UE5)のAIシステムは、ゲーム開発者に強力なツールセットを提供し、リアルで知的な敵キャラクターを作成することができます。UE5のAIシステムの中核となるのは、以下の要素です:
・AIコントローラー
・ビヘイビアツリー
・ブラックボード
・AIパーセプション
・Environment Query System(EQS)
これらの要素を組み合わせることで、複雑な敵AIの行動を設計・実装することが可能になります。
AIシステムの基本設定を行うには、まず新しいAIコントローラーを作成する必要があります。これは以下の手順で行います:
AIコントローラーを作成したら、敵キャラクターのブループリントを開き、[Details] パネルの [AI Controller Class] で作成したAIコントローラーを指定します。
敵AIがゲーム世界を正しく移動するためには、ナビメッシュの設定が不可欠です。ナビメッシュは、AIキャラクターが移動可能な領域を定義するものです。
ナビメッシュの設定手順:
AIコントローラーの設定では、以下の点に注意が必要です:
・[Use Controller Rotation Yaw] をオンにして、AIが正しく回転できるようにする
・[Character Movement] コンポーネントの [Orient Rotation to Movement] をオンにして、AIの向きが移動方向に合わせて自動的に調整されるようにする
これらの設定により、AIキャラクターがスムーズに移動し、環境に適切に反応できるようになります。
ビヘイビアツリーは、AIの意思決定プロセスを視覚的に設計するためのツールです。UE5では、ビヘイビアツリーを使って複雑な敵AIの行動パターンを効率的に実装することができます。
ビヘイビアツリーの基本的な構成要素:
・Sequence:順番に実行するタスクをグループ化
・Selector:条件に応じて異なるタスクを選択
・Decorator:タスクの実行条件を定義
・Service:定期的に実行される処理を定義
敵AIの基本的な行動パターンを実装する例:
このような構造により、敵AIはプレイヤーを発見したら追跡し、そうでない場合は定められたルートを巡回するという基本的な行動を実現できます。
AIパーセプションシステムは、AIキャラクターに「感覚」を与えるための機能です。これにより、敵AIがプレイヤーを視覚や聴覚で検知し、それに応じた行動を取ることが可能になります。
AIパーセプションの設定手順:
AIパーセプションを活用した高度な敵AI行動の例:
・プレイヤーが視界に入ったら追跡を開始
・銃声を聞いたら音源の方向を調査
・プレイヤーを見失ったら最後に見た位置を記憶し、そこまで移動
これらの機能を実装するには、ビヘイビアツリーとAIパーセプションを連携させる必要があります。例えば、AIパーセプションのイベントをブラックボードの値に反映させ、その値に基づいてビヘイビアツリーの分岐を制御するといった方法が考えられます。
Environment Query System(EQS)は、AIキャラクターが環境を分析し、最適な行動や位置を決定するためのシステムです。EQSを使用することで、より知的で状況に応じた敵AIの行動を実装することができます。
EQSの基本的な使用方法:
EQSを活用した高度な敵AI行動の例:
・カバーポイントの選択:
敵AIが戦闘時に最適なカバー位置を選択する
・攻撃位置の決定:
プレイヤーに対して最も有利な攻撃位置を見つける
・逃走経路の計算:
HPが低下した際に、プレイヤーから遠ざかりつつ回復アイテムに近い経路を選択
EQSの強力な点は、複数の条件を組み合わせて評価できることです。例えば、「プレイヤーからの距離」「視界の良さ」「カバーの有無」といった複数の要素を考慮して、総合的に最適な位置を決定することができます。
UE5のEnvironment Query Systemについての詳細な解説はこちら
以上の要素を組み合わせることで、UE5で高度な敵AIを作成することができます。ただし、AIの設計は複雑な作業であり、ゲームの要件や目指す体験に応じて適切にカスタマイズする必要があります。また、パフォーマンスにも注意を払い、必要以上に複雑なAIロジックを実装しないよう注意が必要です。
最後に、AIの開発においては継続的なテストと調整が重要です。プレイヤーにとって適度な難易度と予測不可能性を持ちつつ、フラストレーションを感じさせないバランスの取れたAIを目指すことが、良質なゲーム体験につながります。
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