ZBrush 2023の最も注目すべき新機能の一つは、Maxon社が開発するレンダリングエンジン「Redshift」の統合です。この統合により、ユーザーは高品質なレンダリングを直接ZBrush内で行えるようになりました。
Redshiftの統合によって、以下のような利点が得られます:
これらの機能により、大理石、肌、葉、ワックス、不透明な液体などの複雑なマテリアルのレンダリングが可能になりました。
ただし、Redshiftの利用には注意点があります。Maxon Oneユーザーはフル機能(GPUとCPU)を利用できますが、ZBrushサブスクリプションユーザーはCPUのみの利用となります。GPU版を使用したい場合は、別途Redshiftサブスクリプションの購入が必要です。
スライムブリッジは、ZBrush 2023で導入された革新的な機能の一つです。この機能を使用すると、1、2か所のマスク間を有機的に接続し、粘性のある物体や血管のような表現を簡単に作成できます。
スライムブリッジの主な特徴:
この機能は、キャラクターデザインや生物学的モデリングにおいて特に有用です。例えば、怪物のデザインや解剖学的に正確なモデルの作成などに活用できます。
ダイナミックシンメトリは、ZBrush 2023で導入された機能で、モデリングの効率を大幅に向上させます。この機能により、ギズモ位置を対称の中心とし、中心軸からずらして配置したオブジェクトをシンメトリーを保ったまま編集できるようになりました。
ダイナミックシンメトリの利点:
この機能は、キャラクターモデリングや建築デザインなど、シンメトリが重要な役割を果たす分野で特に有用です。
ZBrush 2023.1で追加されたプロキシポーズ機能は、高解像度メッシュの操作を革新的に改善しました。この機能を使用すると、一時的に低解像度のメッシュを作成し、その変更内容を元の高解像度メッシュに反映させることができます。
プロキシポーズの主な特徴:
さらに、ZBrush 2023.1以降のアップデートでは、プロキシポーズがUVを維持するようになり、テクスチャマッピングを考慮したモデリングがより簡単になりました。
ZBrush 2023.2で導入され、2024でさらに改良されたAnchorブラシは、モデリングの精度と効率を大幅に向上させる革新的なツールです。このブラシを使用することで、メッシュの特定の部分を固定しながら、他の部分を自由に変形させることができます。
Anchorブラシの主な特徴:
Anchorブラシは、特にキャラクターのポージングや、複雑な形状を持つハードサーフェスモデリングにおいて非常に有用です。例えば、キャラクターの関節部分を固定しながら、肢体を自然に曲げるといった操作が容易になります。
ZBrush 2023から2024にかけての一連のアップデートは、デジタルスカルプティングの可能性を大きく広げました。Redshiftの統合による高品質レンダリング、スライムブリッジによる有機的モデリング、ダイナミックシンメトリによる効率的な編集、プロキシポーズによる高解像度メッシュの操作、そしてAnchorブラシによる精密な形状制御など、多岐にわたる新機能と改良点が導入されています。
これらの新機能を効果的に活用することで、3Dアーティストやデザイナーは、より創造的で効率的なワークフローを実現できるでしょう。例えば、キャラクターデザインの分野では、スライムブリッジとAnchorブラシを組み合わせることで、複雑な筋肉構造や独特な外観を持つクリーチャーを素早く作成できます。
また、建築やプロダクトデザインの分野では、ダイナミックシンメトリとRedshiftの統合を活用することで、精密な対称性を持つモデルを作成し、高品質なプレゼンテーション用レンダリングを直接ZBrush内で行うことができます。
さらに、これらの新機能は、教育分野にも大きな影響を与える可能性があります。例えば、プロキシポーズ機能を使用することで、学生は高解像度モデルの基本的な形状を素早く探索し、デザインの基本原則をより効果的に学ぶことができるでしょう。
ZBrush 2023以降のバージョンは、3Dモデリングの世界に新たな可能性をもたらしています。これらの機能を十分に理解し、自身のワークフローに組み込むことで、クリエイターはより効率的に、より高品質な3Dアートを生み出すことができるでしょう。常に進化を続けるZBrushと共に、あなたの創造性をさらに高めていってください。